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「シフォンケーキを作りながら」(12)-2

第一話から読む



「じゃあずっと俺の片思いかよ……」
「こ、こーすけはいつから?」
 私が尋ねると幸輔は少し悩んで、しぶしぶ口を開いた。
「葬式の時から」
「葬式、ってお父さんの?」
 意外な答えだった。そもそも葬式って人を好きになるようなところじゃないと思うんだけど。
 幸輔は目を逸らしながら話し始める。
「葬式の時さ、母さんがあんなだったからしっかりしなきゃと思って、とにかくずっと何も考えないで立ってたんだよ。だから葬式に来た人も母さんのことは慰めてくれたんだけど、俺には特に言ってくれないわけ」
 それが目的だったんだけどさ、と付け加えて幸輔は寂しそうに笑った。
「でも、夏希は俺のこと心配してくれただろ? 大丈夫?って何度も聞いてきてさ」
「そう、だっけ?」
 何とか思い出そうとするけど、あまり覚えていない。美佐子さんにつられて泣いちゃったことは覚えてるんだけど。
「夏希の方がどう見ても大丈夫じゃなかったのに、やたら俺ばっか心配してくれたから、それがなんか、さ」
 幸輔は逸らしていた目を戻して、また私を見つめる。
「ずっと、好きだったよ」
 一気に顔が赤くなるのが分かった。幸輔は私の肩に触れ、頬に触れ、ゆっくり顔を近づけた。
「こーすけ……?」
「キスして、いいか?」
「えっ……」
 頭の中で、上手く言葉が作れない。口からも意味を持った言葉は出てこなくて、もうどうすればいいか分からなかった。
「あ、わ、私……」
 何が何だか分からなくて、とにかく何度も頷いた。幸輔はふっと笑って、両手で私の頬を包んだ。
 ぎゅっと目を閉じて待つと、幸輔の顔が近付いたのが分かった。ゆっくりと近付く時間に耐えきれなくて、彼の肩を掴む。
 暖かい唇が触れ、離れていった。一瞬のことだけど、何よりも甘い味。目を開くと、思ったより近くに幸輔の顔があった。
「なんか、甘いね」
 冗談めかして言うと、幸輔は笑ってもう一度私にキスした。目を閉じてそれを受け入れる。
「シフォンケーキの代わりにキスでいいんじゃねえか?」
「えー」
 口では抗議してみても、ちょっといいかななんて思ってしまった。ついでに、シフォンケーキを食べながらキスすれば……とか思ってしまったけど、これは永遠に封印しておこう、さすがに恥ずかしすぎる。
「じゃ、どっちも」
 そう言って、また唇が触れる。驚いて固まっていると、幸輔は意地悪な笑みを浮かべた。
「邦恵さんが退院したら、今度こそシフォンケーキ作ろうぜ」
 キスしながらな、と意地悪な笑みのまま付け加える。なんか悔しくて、精一杯背伸びして私からキスをした。幸輔からされた三回分、少し長めに唇を合わせる。離れようとしたら抱きしめられて、私も彼の背に手を回して抱き返した。そうしてしばらく、ただ唇を合わせていた。

 もちろん、お母さんと美佐子さんが病室の窓から見ていたことなんて知らなかったのだ。


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