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「シフォンケーキを作りながら」(12)-1

第一話から読む



 病室では考えられなかったくらい、外は暑い。病院を出るとすぐ、彼の後ろ姿が見えた。
「こーすけ!」
 大声で名前を呼んで駆け寄る。幸輔は驚いた顔で私を見ていた。駐車場にある木の下で彼に追いついた。
「邦恵さんはどうした?」
「お母さん達が、こーすけを追いかけろって」
 幸輔は盛大な溜め息をつく。そこには甘い空気は欠片もない。けど、何も言わないでいられるほど私の口は頑丈じゃない。
「あ、あのね、アオヤマ、私」
 言いかけたところで、彼は手で私を制する。理由が分からないままに私は口を閉じた。彼は体を私に向けたまま顔だけ横を見て、反対側を見て、やっと私を見た。
「夏希」
「は、はい」
 改めて名前を呼ばれると緊張してしまう。不自然に背筋を伸ばして私は次の言葉を待った。彼はまた色んな方向を見て、また私をまっすぐに見て、そっと肩に手を置いた。
「好きだ。ずっと……ずっと前から」
 分かっていたことなのに、恥ずかしくなってしまう。つい伏せてしまう顔を思い切ってあげて、彼の目を見つめた。
「わ、私もアオヤマが好き!」
 まっすぐに見つめ合って、目が逸らせない。
「いや、あの、こーすけが好き!」
 沈黙に耐えかねて訂正すると、彼は目をぱちくりさせて、吹き出した。
「わ、笑わなくたっていいじゃん!」
「いや、何か、悪い」
 謝ってはいても、笑いが止む気配は無かった。
「もう、私は真面目に言ってんの!」
「いや、分かってるって」
 彼はどうにか笑いを押さえつけて、まっすぐ私に向き直る。真剣な顔にどきりとさせられた。
「ちゃんと聞けて、安心したらつい、な」
 そう言って優しく笑う。そんな表情にも鼓動は早くなって、そうなっている自分が妙に恥ずかしかった。
「あ、あの、私、えっと」
 どきどきしている自分が恥ずかしくて、話すこともないのに口を開いてしまう。
「えーとその、私、アオヤマが、いやこーすけがずっと家族だと思っててね」
 一度意識してしまうと、名前を呼ぶのも恥ずかしくなってしまう。
「その、さっき、気付いたっていうか」
 そこまで言って自分が墓穴を掘っていることに気付いて、幸輔の表情をうかがう。
「信じらんねえ……」
 彼は頭を抱えていた。なんだか悪いことをしてしまったような気がする。


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