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「シフォンケーキを作りながら」(8)

第一話から読む



 終業式が終わり、ついに夏休みが始まった。今日はお母さんも早く帰ってくるはずだ。もうすぐ今のプロジェクトが一段落つくと言っていたから、これから少しは暇ができるだろう。今日はみんなで、アオヤマの家で夕ご飯を食べようと前から決めてある。
「夏希、帰ろうぜ」
「うん」
 これから美佐子さんの家でお昼ご飯を食べて、お母さんのために三人でごちそうを準備する。デザートはお母さんが好きなレモンとオレンジを使ったシフォンケーキだ。しかも、美佐子さん手作りのマーマレード付き。美佐子さんのお店は、お母さんのために臨時休業だ。
「お母さん、ビックリするかな」
「ああ、きっとな」
 アオヤマが嬉しそうに見えるのは、私が嬉しいからだろうか。それとも、やっぱり私たちが家族だから?
「夏休みはもっとみんなで集まれるよね?」
 アオヤマはにこりと笑って頷く。
「アオヤマ、嬉しいの?」
「そりゃ、夏希がそんな顔してりゃな」
 アオヤマの笑顔に意地の悪い笑みが混ざる。それも気にならないくらい、今の私は期待でいっぱいだった。ふと、携帯電話がポケットの中で震えていることに気付く。取り出してディスプレイを見ると、美佐子さんからの電話だった。
「何だろ、美佐子さんだ」
「買い物じゃねえか?」
 通話ボタンを押し、携帯電話を耳に当てる。
「夏希、ちゃん?」
 美佐子さんの声には焦りが含まれていた。嫌な予感が背を駆ける。
「邦恵が、邦恵が――今、病院に……」
 その後は、言葉にならない声が聞こえた。
「みさこ、さん?」
 自分の声が震えているのが嫌というほど分かって、アオヤマが私の顔を覗き込んだ。
「どうした?」
「お願い、夏希ちゃん、早く来て……」
 美佐子さんは私に負けず劣らず震える声で病院の名前を告げ、電話を切った。私はそこに立ち尽くして、動くことができなかった。
「夏希、どうした? 何があったんだ?」
「アオヤマ……お母さんが――」
 涙が勝手に頬を伝った。


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