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「シフォンケーキを作りながら」(5)-1

第一話から読む



 お母さんは結局八時前にやってきた。その時ちょうど私たちは夕ご飯を食べ始めようとしていて、速く来るためにお母さんは無理矢理仕事を終わらせてきたらしい。
「久しぶり、美佐子!」
「邦恵、本当に久しぶりね!」
「お互い忙しくて全然会えないものね。ああ、さっさと仕事終わらせてきてよかった!」
「夏希ちゃんと幸輔には感謝しなくちゃね」
 お母さんと美佐子さんが感動の再会を果たしている間に、私とアオヤマは勝手に乾杯してそれぞれ目をつけていたものを食べ始めた。私はピカタを二つ一気に食べ、アオヤマは焼きなすをじっくり味わっているようだ。
「ちょっと夏希! もうちょっと遠慮しなさいよ」
 焼きなすに箸をつけたところで、お母さんに頭を小突かれた。手にはいつの間にかワインの入ったグラスを持っていた。うう、アオヤマだって遠慮してないのに、不公平だ。
「いいじゃない邦恵。半分は夏希ちゃんが作ったようなものなんだから」
「うそ、夏希が?」
 驚くお母さんに向かって、私は口になすを入れたまま胸を張ってみせた。
「あんた、料理できたのね……」
 今日はシフォンだって作ったんだぞ、と言いたかったけれどなすが邪魔でしゃべれない。そもそも作ったのはアオヤマで私は手伝っただけだけど。
「さあ、邦恵も食べて食べて。デザートは夏希ちゃんと幸輔が作ったシフォンケーキよ」
 感心していたお母さんの表情がにやりと変わった。
「なるほどねー」
 しまった、これじゃシフォンケーキにつられて美佐子さんを手伝ったみたいだ。違うよ、純粋に美佐子さんを手伝いたくて手伝ったんだよ! と言いたかったけど、さっき口に入れたばかりのフライドポテトが邪魔で言えない。
 美佐子さんはお母さんと自分のグラスにワインを注いだ。ちなみに私とアオヤマが飲んでいるのはさっき買ってきた炭酸カルピス。アオヤマはレモンソーダがいいと言ったけど私が断固譲らなかった。
「大人組はワインで乾杯しましょ」
 美佐子さんが言って、二人はグラスをあわせた。さっきから飲んでたじゃん、という文句はフライドポテトと一緒に飲み込んでおく。さっきアオヤマと乾杯したけど、私も美佐子さんとお母さんとグラスをぶつけた。お母さんはワインを一口飲んで、ピカタを口に運ぶ。
「本当に、懐かしいわね……」
 しんみりとお母さんが言う。そうね、と美佐子さんが相槌を打った。
「この三年、美佐子がいなくて寂しかったんだからね?」
「あら、私だって邦恵がいなくて寂しかったわ」
 二人はくすくす笑い合う。まさかもう酔ってるのかこの二人。ちょっと早いよ。
 お母さんは椅子の背もたれに寄りかかってふっと笑う。
「美佐子達がいないのは、家族が足りないようなものだから」


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