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看守と死刑囚07「英雄の面会(2)」

 
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 十二月に国境侵略があってからずっと、ナスリアがこのエリレス国を狙っているのだと言われていたし、この国の誰もがそれを信じていた。だけど本当はその逆だった、なんて。魔法の技術も騎士の数もエリレスが勝っているから、それに対抗するためにナスリアは秘術を狙っているのだと、そう思っていた。
「お前の裁判が行われている間に、偽の秘術がナスリアに渡った」
 秘術がナスリアに奪われたことを口実にナスリアを侵略する。その時になってナスリアが秘術を発動しようとしても、偽物が発動するはずもない。僕が秘術を発動させてしまったあの事件は、ナスリアに秘術が盗まれたことを分からせるためだけに起こしたという。
 驚くことに、国の政治には関与しないことを宣言している術者連盟の上層部がその計画に加担したいると兄さんは言う。
「俺は……連盟長補佐に、お前と俺のどちらを犯人にするか選べと言われて、我が身可愛さにお前を陥れた」
 苦しそうな兄さんの声。今まで僕に見せたことのない表情。
「連盟長補佐は、お前が助かるように根回しをすると言ったんだ。だけど何もしてくれなかった」
 強く言葉を吐き出して、兄さんは深く息を吐く。
「……悪い。言い訳にしかならないな」
 僕は首を横に振って、何とか笑顔を作る。
「本当のこと話してくれた方が嬉しいよ」
「ありがとうな」
 少し寂しそうな顔で兄さんも笑う。
「お前は俺が絶対に助けてやるから」
 それから急に笑みを消し、真面目な表情になる。
「シント・ガルドリアがそこらを調べまわっていることに気付かれたら彼がどうなるか分からない。止められるか?」
「分からないけど……明日は一度戻ってくるって言ってたから、その時に説得してみる」
「それでいい。あとは待ってろ、絶対に助けてやるから」
 僕は頷いて、疑問を小さく口にする。
「一体、どうするの……?」
 少しだけ笑って兄さんは答える。
「お前はただ待っていれば良いんだ」
 兄さんが僕を助ける方法。兄さんが犯人だと名乗り出る以外に、僕には思いつかない。
「兄さん、まさか、」
 僕の言葉を遮るように扉がノックされる。ルーリエさんが遠慮がちに入ってきた。
「そろそろ時間です」
 途端に兄さんは余所行きの笑顔を作る。
「無理を言ってすみませんでした」
「いえ、英雄殿の頼みですから」
 ルーリエさんに笑いかけて、兄さんは椅子から立ち上がる。
「じゃあな、フィア」
「待って、兄さん!」
 立ち去ろうとする兄さんの背に向かって叫ぶ。兄さんは一度だけ振り返って、軽く右手を挙げて、部屋を出て行ってしまう。またすぐ檻の中に閉じこめられる僕に何かができるはずもなかった。

 *

 翌日の二月二十日、シントさんは言葉通り戻ってきた。
「エフリウス・リベットと面会したそうだな。何を話した?」
 やけに久しぶりに思える彼の声。兄さんと同じ紺色の瞳。シントさんが涙で滲んで見える。
「おい、どうした?」
「う、兄さん、が……」
 ぼろぼろと涙を流しながら昨日のことを話す。エリレスのこと、ナスリアのこと、秘術のこと、兄さんが助けてくれると言ったこと。
「だ、だから、シントさんは危ないこと、しなくていいんです」
 しゃくりあげながら何とか告げる。シントさんは表情を変えないまま「そうか」と呟いた。
「俺のしたことは余計だったみたいだな」
 僕は泣きながら首を振る。
「違います。シントさんが僕を信じてくれたから、兄さんと面会して、ご飯だって食べて、だから」
 涙を袖で拭って顔を上げる。
「一番の親友ができて、幸せです」
「親友、か」
 シントさんは微笑んで、僕にハンカチを差し出す。僕は檻ごしにそれを受け取って、まだ溢れようとする涙をそっと拭った。
「だが一つ、気になることがある」
「え?」
「ナスリアが戦争の準備を進めているらしい」
「ナスリアが?」
 ハンカチを返しながら聞き返す。
「昨日の話では、いつでも戦える状態にまでなっているらしい。最悪、今この時に攻め入ってくることも考えられる」
「秘術を手に入れたから、ですか?」
「かもしれんな。今は何を言っても憶測の域を出ないが」
 沈黙が落ちる。シントさんはハンカチをズボンのポケットにしまい、前へ向き直った。
「ガルドリア先輩!」
 遠くからルーリエさんの声がする。檻の中からは見えないけれど、どうやらシントさんからは見える位置にルーリエさんがいるようだ。
「緊急招集です。鍵を確かめて会議室へ!」
 僕達は互いに顔を見合わせる。
「良い知らせだといいんですけどね」
「望み薄だな」

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