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「これが、最後の戦い」

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 魔物を一刀のもとに斬り伏せる。振り向きざまに剣を振り下ろし、ショートケーキに飛び掛かろうとしていた魔物を斬る。
「あ、ありがとう」
「無理しないで、僕の後ろに下がってて」
 息の荒い彼女の前に出て、剣を握り直す。
「待って、怪我してるわ」
 彼女が一言二言唱えると、みるみるうちに傷が塞がっていった。
「ありがとう」
「無理しないでね、チーズケーキさん」
 無理はするだろうな、と思いながら微笑みを返す。少なくとも死ぬことだけは避けなければ、ここに来た意味がない。彼女に背を向けて、僕は魔物の群れに突っ込んでいった。
 元々はただのケーキだった僕らが、剣を振るうことになるなんて考えられただろうか。思えば、人間の姿になってから随分といろいろなことがあった。
 はじめはただ戸惑うだけだったけれど、すぐに魔物が現れ始めた。逃げまどう人間達の中一人だけ堂々と立っていた人が、僕に戦い方を教えてくれた。魔物は元々ケーキとは対極にある辛いものから生まれたもので、それを打ち倒せるのは僕たちケーキの力だけだ。師匠は僕に剣を、ショートケーキに癒しの術を、モンブランには糖術という魔法を教え込んだ。そして、僕らを人間の姿にし、その力を利用しようとした者の存在を教え、姿を消してしまった。けれど、きっと、すべてが終わったら会えると信じている。
「危ない!」
 ショートケーキの声で、魔物の爪が目前に迫っていたことに気付く。
「くっ!」
 とっさに剣を構えるが、それも弾かれる。やられるのか、こんなところで――!
「お兄ちゃん!」
 叫び声の直後に目の前で爆発が起こり、思わず目を閉じる。
「チーズケーキお兄ちゃん、大丈夫?」
 目を開けると魔物は視界から消え、代わりにモンブランが駆け寄ってきていた。首を巡らせると、魔物は壁に打ち付けられ気を失っているようだった。
「チーズケーキさん、怪我はない?」
「多分、無いかな」
「強いからってぼーっとしないでよ!」
「ごめん、気を付けるよ」
 先ほどの魔物が最後の一匹だったらしい。ちらと扉に目をやると、それに気付いたモンブランが口をつぐんだ。
「あの奥にいるんですね」
 ショートケーキが緊張した面持ちで扉を睨む。
「あいつさえ倒せば、またケーキに戻れますよ」
 自分を安心させるためにも強い声を出す。彼女はぎこちない笑みを浮かべてみせた。
「また、ケーキに戻っちゃうんだ……」
 独り言のつもりで言ったのだろうその声は、僕の耳に届いていた。
「モンブラン」
 名を呼ぶと、モンブランは弾かれたように顔を上げる。
「あ、違うの! ただその、自分勝手に動けるのも楽しいな、って思っただけで、ケーキのままでいる方がもちろん絶対いいの!」
 彼女は彼女なりに自分を納得させているつもりだろうけれど、そのかすかな迷いは敵につけ込まれる隙ともなりかねない。ここでもう少し、しっかりと言い聞かせてやるべきだろうか。ショートケーキに目配せすると、困り顔で視線を返される。
「ほら、早く行こ! ぐずぐずしてたらまた魔物が来ちゃう!」
 僕の考えを知ってか知らずか、モンブランは僕とショートケーキの背中を押して前に進ませる。
「そんなに押さなくても自分で歩くって」
「でも、モンブランの言うとおりかもしれないわね」
 僕らはそれぞれの武器を握りしめ、扉の前に立つ。

 これが、最後の戦いだ。



End.

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