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はじめての約束06「今日の約束(2)」

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「な、ん」
 すぐに離れた後も、彼女は頬を真っ赤にさせたまま口をぱくぱく開閉している。可愛いなあと微笑んだら、
「じ、ジルの変態!」
 頬を殴られた。
「……すみません、つい」
「馬鹿! 変態! ばか、ばか!」
 ぺしぺしと肩や胸を叩かれる。ひとまずは叩かれるままにしておいて、彼女に気付かれないようにため息をついた。キスが駄目なら、同じベッドで寝ないで欲しい。あまつさえ、起きてからずっとしがみつくなんて。
「すみません。もうしないように気をつけるので」
 断言できない言い回しが不満のようで、フィアスは上目に僕を睨む。それから小指を差し出した。
「約束しなさい」
「できません」
 断言すると、彼女は目を丸くした。子供に餌を投げつけられた鳥のようで、これはこれで可愛くはある。
「果たせない約束はしないことにしました」
「は、果たせないって……」
 小指を差し出したままでフィアスは固まっている。まさかその言葉の意味まで説明が必要だろうか。それはさすがに僕が恥ずかしいのだけれど。
 やり場のなくなってしまったらしい指に、自分のものを絡めてみる。
「では、次からはあなたの許可を取りますよ」
「えっ?」
 素っ頓狂な声を上げて、フィアスは絡まった小指を見つめる。指を離して、彼女の髪を優しく撫でた。
「フィアス」
 名前を呼ぶと、顔を真っ赤にさせて僕を見返す。僕が次の言葉を紡ぐまでの時間が、彼女にはきっと途方もなく長いのだろう。
 髪を撫でていた手を、頬へと移動させる。耳元へ唇を近付けて、全身を緊張させる彼女へ、そっと囁きかけた。
「――そろそろ起きましょうか」
 朝食の時間ですよ、と。ようやく起き上がって、呆然としている彼女を置いてベッドから降りる。
「今頃、料理長が途方に暮れていますよ。早く食堂へ」
 振り向いた顔に、勢いよく枕が飛んできた。
「ジルの馬鹿!」
 ちょうど振り向こうとして不安定な体勢を取っていたこともあって、よろけて見事に倒れてしまう。痛々しい音に、フィアスの悲鳴が重なった。
 まあ、これはこれで愛しい日常の一場面なのだけれど。


   ――Fin.


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