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はじめての約束03「はじめての約束(1)」

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「お兄様はね、学校で一番頭がいいのよ!」
「ヘクト様ですか。確か、カーリベルク校に通っていらっしゃるんですよね」
「そうなの。そこでね、この間の試験で二年生の一番だったんだって!」
 自慢のお兄様なのよ、と目の前の少女は笑う。自分以外の人間が彼女を喜ばせているという事実にすら嫉妬していることに気づいて、僕は心中でため息をついた。彼女に恋心を抱いたこと自体は後悔していないが、ここまで露骨な感情を持ってしまうと自己嫌悪の一つもしたくなる。全く気づかれていないのが不幸中の幸いだろうか。
「さすがはアイゲンズィン家の跡継ぎとなる方ですね」
「もう、すぐそういうこと言うんだから」
 ありきたりな賛辞を口にすると、フィアスは頬をふくらませた。
「アイゲンズィンだから頭がいいんじゃないのよ。お兄様はお兄様だから頭がいいの」
「……そうですね、ヘクト様ご自身が努力しているからこそ良い成績を収めていらっしゃる」
「わかればいいのよ」
 自慢げな笑顔に思わず苦笑を浮かべた。そこらの貴族連中がこの会話を聞いても子供の戯れ言だと流されるだけだろう。伯爵令嬢らしからぬ言動は、彼女が伯爵家に生まれた娘としてでなく、フィアス個人として愛された結果だろうか。
「みーんなお兄様のことを話すときは『アイゲンズィン家の』とか『伯爵家の』とか付けるんだもの。まるでヘクトお兄様じゃない人の話みたい」
「まあ、ある程度は仕方のないことでしょうね」
「もういやになっちゃう。私だって、アイゲンズィン伯爵家令嬢なんてものじゃなければもっと堂々とジルに会えるのに」
 思いがけない言葉。僕は一瞬動きを止めて、それから何とか苦笑を作った。何の他意もない彼女の言葉に、意味がないと分かっている期待を抱いて口を開く。
「そうですね。あるいは、僕が伯爵家の長男だとか」
「そうよね……」
 何かを考え込むそぶりを見せてから、フィアスはいかにも名案を思いついたと手を打った。
「じゃあジルがうちに来たらいいのよ!」
「……は?」
「うちに来たら伯爵家の子供になるじゃない?」
 フィアスがどういう意味で言ったか全く予想できないが、場合によってはプロポーズにも聞こえかねない台詞だ。そういった意味合いは全くないと確信している上で、そっと異論を述べてみた。
「そういうのは、一般に婿養子といいますよね」
「そうなの?」

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