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誕生日の約束06「わがままと贈り物(1)」

第一話から読む


 テラスから戻った少女は、こちらへ来るなり隠していた表情を露わにした。笑顔で言葉を交わしている父親と公爵を不機嫌な顔で睨んでいる。
「西部の観光に行きませんか、ですって」
「観光、ですか」
 何と返すべきかジルが迷っていると、フィアスは口を尖らせて呟く。
「ただの観光なら文句はないわ」
 西の方にはあまり行ったことがないし、と目の前の少女は今にも文句を言いそうな顔で付け足した。
「どうしてヴェステン公爵のお屋敷に行かなきゃいけないの」
「あなたと婚約するかどうか決めるためかと」
 ジルが当然の答えを返すと、フィアスはますます眉間の皺を深くした。
「だからって、どうして私一人なのよ。お母様が来てくれたっていいじゃない」
「伯爵夫人も何かとお忙しい方ですから」
「なら断ってくれればよかったのに。娘を一人で男の所へ行かせるなんて酷いわ」
 普段は家族にわがままばかりの彼女にとっては、常に猫をかぶっていなければならない環境は苦痛なのだろう。甘い物でも与えようかと横目で料理を物色しながら、ジルは適当な慰めを口にした。
「ヴェステン公爵が実は嫌な人だという可能性もありますし、彼を見極める良い機会では?」
「別にいいわ。どうせあまり好きになれなさそうだもの」
 ケーキを取ろうとしたジルの手が止まる。思わずフィアスを見ると、彼女はジルを見返しながら首を傾げた。
「何?」
「……いえ」
 ケーキを皿に取りながら聞きたいことを整理する。皿を差し出されると、フィアスは口元をほころばせてそれを受け取った。
「美味しそう」
 フォークで一口大に切って、口へ運ぶ。フィアスがうっとりとした表情を浮かべると、ジルはようやく口を開いた。
「ヴェステン公爵はどんな方でしたか?」
「紳士って感じだったわ。初対面でも気さくに話してくれたし、気も利くし」
 二口目のケーキを口に運んだフィアスの顔から笑顔が消える。
「でも完全に子供扱いされていたわ。お父様が私に話すような態度だったもの」
「なるほど」
 頷いてから、ジルは問いを重ねる。
「ならば婚約しなければ良いのでは?」
「別にいいわよ。誰と婚約したって大して変わらないし」
「そんなものですか」
 適当にも聞こえる答えをジルが返すと、フィアスは眉をしかめてジルを睨んだ。
「何か文句がありそうな顔をしているわね」


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