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誕生日の約束05「公爵と伯爵令嬢」

第一話から読む


 様々な人が祝いの言葉を述べていく。それぞれに同じような礼を返し、同じような話題で笑う。いい加減笑顔が貼り付きそうになってきた頃、よく知った声がフィアスにかけられた。
「お誕生日おめでとうございます、フィアスお嬢様」
「ジル」
 気の抜ける相手が現れたことに安堵して、知らずの内に肩の力を抜く。差し出されたグラスを、礼を言いながら受け取った。
「ドレスの着心地はいかがですか?」
「最初はいつ潰れるかと思っていたけど、もう慣れてしまったみたい」
「それは何よりです」
「でもお料理があんまり食べられないのよ。すごく美味しいのに」
 フィアスが頬を膨らませる。ジルは苦笑して、豪華な料理へ視線を向けた。
「食べ過ぎてしまうよりは良いと思いますよ」
「慰めになってないわ」
「申し訳ありません」
 何てことのない会話を交わしながら、フィアスは広間を見渡す。父は知らない男性と談笑している。結婚したがらない兄は誰かに女性を紹介されているようだ。相手は確か王都に住む侯爵家の人だ。悪い縁談ではないはずだけれど、紹介されている本人はあまり嬉しくなさそうな笑顔を浮かべている。
「ヴェステン公爵にはお会いしたのですか?」
 不意にジルが問いかける。フィアスは視線を戻さないままそれに答えた。
「そう言えばまだ会っていないわ。お父様が紹介してくださると思っていたけど」
「あまり関心がないようですね。結婚するかも知れない方なのに」
 フィアスはようやく視線をジルに戻し、首を傾げた。
「だって、結局はあまり知らない人と結婚するんだもの。そんなに気にしても仕方ないわ」
「そういうものですか」
 困ったような表情を浮かべたジルが、ふと視線を横に滑らせる。フィアスが半ば無意識でその視線を追うと、父が先程話していた相手を連れてこちらへ歩いてきていた。
「では、僕はこれで」
「ええ。頑張って結婚相手でも見つけなさい」
「父が十分努力していますよ」
 立ち去るジルを見送ってから、フィアスは父親へと向き直る。微笑を作って、彼へと歩み寄った。
「お父様」
 父を呼ぶと、彼は嬉しそうに目を細める。フィアスの頭を何度か撫で、連れ立っていた男性に彼女を紹介した。
「ヴェステン公爵、娘のフィアスです」
 視線で促され、フィアスはドレスの裾を持って広げ礼をする。
「お会いできて光栄です、フィアス・ファウ・アイゲンズィンです」
「初めまして。マーノルド・ヴェステンです。よろしくね、フィアス」
「よろしくお願いします」
 年は二十四、五だろうか。思っていたよりは若い。想像よりも親しみを持っている彼の言葉に戸惑いながらも、フィアスは手の甲に口付けを受けた。
「話に聞いていたよりもずっと美しい。君のような娘を持って、アイゲンズィン伯爵は幸せだね」
「自慢の娘ですよ」
 親しみを持っている、というよりは単に子供扱いされているだけのようだ。相手は自分より年上なのだから仕方ないと言えば仕方ないのだろう。
「ありがとうございます」
 何となく納得できない物を感じながらも笑顔で礼を述べる。父親は笑顔でテラスを指し示した。
「せっかくだから、二人でお話してきなさい」
 面倒くさいと少しだけ思いながら、フィアスは父親の言葉に頷いた。


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